久保田紺句集『大阪のかたち』
2015/05/29
Fri. 19:27
大阪のおばちゃんは笑ったり泣いたり怒ったり忙しい。つまり、紺さんは笑ったり泣いたり怒ったり忙しい。
ということは、紺さんの句も笑ったり泣いたり怒ったり忙しいのである。
というわけで、紺さんの句を喜怒哀楽に分類してみる。(やや強引)
(喜)
いいにおいふたりで嘘をついたとき
全身がイボになるまで触ってよ
かわいいなあとずっと端っこを噛まれる
大阪のおばちゃんはタダが好きやけど、タダでは喜びません。
紺さんもタダゴトでは喜ばへんのです。
悪いことしといて喜ぶ。ちょっかい出されて喜ぶ。まさに川柳がヒョウ柄着て歩いてるようなもんですね。
かわいいなあ、紺さん。(すりすり・・カミカミ・・・)
(怒)
照らさないでくれせっかくの底を
泣いているされたことしか言わないで
火を点けたくせにあわてて消しにくる
理不尽、涙、びびり、許しません。
紺さんの句は人間の弱い部分、言われたくない部分をピシャリと突いてくる。ただ突かれた側がそれを痛いと
感じないのは、自身を客体化することで、作者が自分自身に言っているのか一般論として言っているのか、
主体を曖昧にしているせいかもしれない。それは作者と読み手の位置が同じ高さにあるということでもある。
本当のところ、怒っている句はほとんどなく、無理矢理「怒」に分類した次第。
(哀)
笑っているから忘れていないはず
スイッチが切れるだあれも切ってない
着ぐるみの中では笑わなくていい
かわいそうと言われた日からかわいそう
ふたつ揃ったらさみしいことになる
傘は乾いてくるくる回ったりもする
実は「哀」の句はとても多かった。他の方が選んでいる句をなるべくカット。
紺さんの句には、よく〈もうひとりの自分〉が登場する。姿は見えない。けれど笑っている紺さんの
すぐそばにいる。〈カナシミ〉は気づいてほしくて紺さんの周りをうろうろしているのかも。
紺さんのカナシミはわたしのカナシミであり、にんげんのカナシミなんである。
(楽)
父さんは元気で生まれ変わらない
ショッカーのおうちの前の三輪車
股間の葉っぱ頭頂部の葉っぱ
印鑑のケースの中でずりずりする
こんなとこで笑うか血ィ出てんのに
唐揚げになるにはパンツ脱がないと
眼鏡かけてから選んでいる眼鏡
紺さんはオヤジ(お父ちゃん)の話をよくする。どーしようもない(わたしが言うか?)人やけど、
そのどーしようもなさを楽しんでいる。紺さんは自分の病気でさえ他人事みたいに楽しそうに話す。
紺さんはどんな時でもふつうのことからちょっとだけへんなとこを見つけるのがとても上手だ。
だから紺さんのまわりにはへんな人が多い。
と、喜怒哀楽に分けながら、どうにもそれらに収まらない句がぎょーさんあるのです。
ということで新たにカテゴリを設けました。
それが「悪意」。実は上に揚げた句も一皮剥けば悪意なんですけどね。
(悪意)
許さないままで笑っていられます
うつくしいとこにいたはったらええわ
伏見稲荷の鳥居出てくるソーセージ
一輪車のうしろに乗せてあげましょう
前向きな蟹でとっても食べにくい
母がいるこりこりすると思ったら
家中の蓋を集めて家出する
人はけなしながら褒めるのがふつうだけど、紺さんは褒めながらけなすからね。こわいわ。笑てるし。
紺さんのほくそえんでいる姿が目に浮かぶ。
悪意の中からさらに「ずるい」を抽出。(誰か止めてくれー)
(ずるい)
どこの子やと言われたときに泣くつもり
白く塗ったらしあわせに見えるやろ
謝りに襟の小さい服を着て
泣き止めば私を置いてゆくだろう
詰め合わす開けたらきみが泣くように
3句目、大好きです。ただこのずるさは本当にずるい人にしかわからないのかもしれません。
作者の中にもおんなのズルさがあり、それを自覚していてあっさりと自己批判まで持っていく。
そうやって書かれた句の他人事ではない私性に読み手は安心感や共感を覚えるのだと思うのです。
実際はもっと振り分けたんです。たとえば「いとしさ」と「せつなさ」と「心強さ」と。もうねキリがないので
やめました。十分楽しんだし。だもんで最後にどんとまとめて。
(その他)
シャワーを浴びてちょっと汚して帰ります
捨てたのに環状線の網棚に
くださいと頼むほどではないんだな
しっぽ振るまでずっと頭をなでられる
食パンのだんだん厚くなる家族
春になるたび切る人形の前髪
目が合うとお母さんだと思われる
ぎゅっと押しつけて大阪のかたち
紺さんをぎゅっと押し付けて、なんか色んなものが飛び散ったような1冊でした。
もういやと鳴けばもういやという名前 久保田紺
ということは、紺さんの句も笑ったり泣いたり怒ったり忙しいのである。
というわけで、紺さんの句を喜怒哀楽に分類してみる。(やや強引)
(喜)
いいにおいふたりで嘘をついたとき
全身がイボになるまで触ってよ
かわいいなあとずっと端っこを噛まれる
大阪のおばちゃんはタダが好きやけど、タダでは喜びません。
紺さんもタダゴトでは喜ばへんのです。
悪いことしといて喜ぶ。ちょっかい出されて喜ぶ。まさに川柳がヒョウ柄着て歩いてるようなもんですね。
かわいいなあ、紺さん。(すりすり・・カミカミ・・・)
(怒)
照らさないでくれせっかくの底を
泣いているされたことしか言わないで
火を点けたくせにあわてて消しにくる
理不尽、涙、びびり、許しません。
紺さんの句は人間の弱い部分、言われたくない部分をピシャリと突いてくる。ただ突かれた側がそれを痛いと
感じないのは、自身を客体化することで、作者が自分自身に言っているのか一般論として言っているのか、
主体を曖昧にしているせいかもしれない。それは作者と読み手の位置が同じ高さにあるということでもある。
本当のところ、怒っている句はほとんどなく、無理矢理「怒」に分類した次第。
(哀)
笑っているから忘れていないはず
スイッチが切れるだあれも切ってない
着ぐるみの中では笑わなくていい
かわいそうと言われた日からかわいそう
ふたつ揃ったらさみしいことになる
傘は乾いてくるくる回ったりもする
実は「哀」の句はとても多かった。他の方が選んでいる句をなるべくカット。
紺さんの句には、よく〈もうひとりの自分〉が登場する。姿は見えない。けれど笑っている紺さんの
すぐそばにいる。〈カナシミ〉は気づいてほしくて紺さんの周りをうろうろしているのかも。
紺さんのカナシミはわたしのカナシミであり、にんげんのカナシミなんである。
(楽)
父さんは元気で生まれ変わらない
ショッカーのおうちの前の三輪車
股間の葉っぱ頭頂部の葉っぱ
印鑑のケースの中でずりずりする
こんなとこで笑うか血ィ出てんのに
唐揚げになるにはパンツ脱がないと
眼鏡かけてから選んでいる眼鏡
紺さんはオヤジ(お父ちゃん)の話をよくする。どーしようもない(わたしが言うか?)人やけど、
そのどーしようもなさを楽しんでいる。紺さんは自分の病気でさえ他人事みたいに楽しそうに話す。
紺さんはどんな時でもふつうのことからちょっとだけへんなとこを見つけるのがとても上手だ。
だから紺さんのまわりにはへんな人が多い。
と、喜怒哀楽に分けながら、どうにもそれらに収まらない句がぎょーさんあるのです。
ということで新たにカテゴリを設けました。
それが「悪意」。実は上に揚げた句も一皮剥けば悪意なんですけどね。
(悪意)
許さないままで笑っていられます
うつくしいとこにいたはったらええわ
伏見稲荷の鳥居出てくるソーセージ
一輪車のうしろに乗せてあげましょう
前向きな蟹でとっても食べにくい
母がいるこりこりすると思ったら
家中の蓋を集めて家出する
人はけなしながら褒めるのがふつうだけど、紺さんは褒めながらけなすからね。こわいわ。笑てるし。
紺さんのほくそえんでいる姿が目に浮かぶ。
悪意の中からさらに「ずるい」を抽出。(誰か止めてくれー)
(ずるい)
どこの子やと言われたときに泣くつもり
白く塗ったらしあわせに見えるやろ
謝りに襟の小さい服を着て
泣き止めば私を置いてゆくだろう
詰め合わす開けたらきみが泣くように
3句目、大好きです。ただこのずるさは本当にずるい人にしかわからないのかもしれません。
作者の中にもおんなのズルさがあり、それを自覚していてあっさりと自己批判まで持っていく。
そうやって書かれた句の他人事ではない私性に読み手は安心感や共感を覚えるのだと思うのです。
実際はもっと振り分けたんです。たとえば「いとしさ」と「せつなさ」と「心強さ」と。もうねキリがないので
やめました。十分楽しんだし。だもんで最後にどんとまとめて。
(その他)
シャワーを浴びてちょっと汚して帰ります
捨てたのに環状線の網棚に
くださいと頼むほどではないんだな
しっぽ振るまでずっと頭をなでられる
食パンのだんだん厚くなる家族
春になるたび切る人形の前髪
目が合うとお母さんだと思われる
ぎゅっと押しつけて大阪のかたち
紺さんをぎゅっと押し付けて、なんか色んなものが飛び散ったような1冊でした。
もういやと鳴けばもういやという名前 久保田紺
[edit]
現代川柳ヒストリア+川柳フリマ
2015/05/20
Wed. 18:13
川柳フリマ、おつかれさまでした。
楽しかったです。受付嬢ならぬ受付婆しました。
若い!と思えば俳句の方、短歌の方。いいですね。若い人がいるだけで、なんというか空気が軽い。
倉間しおりちゃん、かわいかったです。すこぶる小顔だったです。
同じ川柳をしていても、接点がなかったり、遠方にお住まいだったりなかなかお目にかかることのできない
方ともお会いすることができ、有意義な一日でした。
「川柳をどう配信するか」という天野慶さん(歌人)と小池さんの対談がありました。
天野慶さんのように短歌を知らない人に対して「裾野を広げる」地道な活動があり、一方でそれらすべてを
牽引していくカリスマ性のある歌人がいるという構造が短歌の強さなのだなあと思いました。
ただやはり小池さんの話にもありましたが、川柳はネットを介しての配信には本当に弱い。わたしも弱い。
もともと機械に弱いうえに、時代に流されたくないっていうかね、世の中に対して斜に構えるって
いうんですかね、そういうところがあるんですわ、川柳人には、おそらく。そこが愛すべき川柳人の習性
なんですけどね、残念ながらそこが川柳の足(?)をひっぱっているというのが悲しむべき現実でもあり、
わたしたちは時代に取り残された可哀相な大人であり、その壁を前ににっちもさっちもいかない状況で
あって、なんて書くと、にっちってなん?さっちって誰?ってそっちの方が気になって、いえ、うまいこと
言おうとか全然そんなあれはないんですけどね(少しはあるけどね)、そう、そういうこまごまとした現実が
さらに立ちはだかり、ほんまにもう、ねえさん、ピンチです。嗚呼、小池さん、こんな私ですみません・・・。
そしてこの日手に入れたもの。
久保田紺さんの句集「大阪のかたち」
瀬戸夏子さん、平岡直子さん(ともに歌人)による川柳句集「SH」
北大路翼さんの句集「天使の涎」
他に、フリーペーパーのコーナーにて、
川合大祐さんの自句自壊集「異月都市」
柳本々々さんの「夢八夜」
八上桐子さんの「SO」
をいただいて帰りました。ありがとうございました。
楽しかったです。受付嬢ならぬ受付婆しました。
若い!と思えば俳句の方、短歌の方。いいですね。若い人がいるだけで、なんというか空気が軽い。
倉間しおりちゃん、かわいかったです。すこぶる小顔だったです。
同じ川柳をしていても、接点がなかったり、遠方にお住まいだったりなかなかお目にかかることのできない
方ともお会いすることができ、有意義な一日でした。
「川柳をどう配信するか」という天野慶さん(歌人)と小池さんの対談がありました。
天野慶さんのように短歌を知らない人に対して「裾野を広げる」地道な活動があり、一方でそれらすべてを
牽引していくカリスマ性のある歌人がいるという構造が短歌の強さなのだなあと思いました。
ただやはり小池さんの話にもありましたが、川柳はネットを介しての配信には本当に弱い。わたしも弱い。
もともと機械に弱いうえに、時代に流されたくないっていうかね、世の中に対して斜に構えるって
いうんですかね、そういうところがあるんですわ、川柳人には、おそらく。そこが愛すべき川柳人の習性
なんですけどね、残念ながらそこが川柳の足(?)をひっぱっているというのが悲しむべき現実でもあり、
わたしたちは時代に取り残された可哀相な大人であり、その壁を前ににっちもさっちもいかない状況で
あって、なんて書くと、にっちってなん?さっちって誰?ってそっちの方が気になって、いえ、うまいこと
言おうとか全然そんなあれはないんですけどね(少しはあるけどね)、そう、そういうこまごまとした現実が
さらに立ちはだかり、ほんまにもう、ねえさん、ピンチです。嗚呼、小池さん、こんな私ですみません・・・。
そしてこの日手に入れたもの。
久保田紺さんの句集「大阪のかたち」
瀬戸夏子さん、平岡直子さん(ともに歌人)による川柳句集「SH」
北大路翼さんの句集「天使の涎」
他に、フリーペーパーのコーナーにて、
川合大祐さんの自句自壊集「異月都市」
柳本々々さんの「夢八夜」
八上桐子さんの「SO」
をいただいて帰りました。ありがとうございました。
[edit]
衣替えなど。
2015/05/15
Fri. 18:53
衣替えの季節である。
そして毎年恒例悩みの季節でもある。家の中が寒いのだ。だからなかなか衣替えられないのだ。
ヒートテックの安心感に依存してしまう。朝晩、フリースのやさしさについ甘えてしまう。
昼間、ちゃんちゃんこのない生活なんて考えられない。そしてこの感覚で外出すると、汗を通り越し、
のぼせて今度は冷や汗がでる始末なのである。それなのにヒートテックと別れることができない。
ああ、これじゃあ好きでもない男とずるずる付きあっているダメな女みたいじゃないか。勇気を出して
今日こそ別れを切りだそう。などといいながら、半分は衣替えが面倒くさいだけなんだけどね。
とりあえずヒートテック1枚だけ残してあとは片づける。片づけた。よし。身の周りの引き出しや
クローゼットがすっきりしてうれしいはずなのに、心がすぅすぅするのはWhy?
さむい。
◆
衣替えをきっかけに、断捨離モードに入った。
ここしばらく着ていないものはどんどん捨てている。
やさしさにほだされやすいわりに捨てるのは得意である。
衣替えをしながら、夏物のカーディガンが目にはいる。
「あっ。」と思う。「これはっ。」と思う。
去年買った麻のカーディガン。
去年、外出すると途中からなんかしんどい、ちょっと休憩させて、ということが数回続き、
わたしも体力落ちたなー、歳かなーと思っていた時、ふと気づいたのだ。
しんどくなる時、わたしいつもこのカーディガン着てる、と。
それから怖くて着ていない。
使用されている麻に対するアレルギーのなのかなあとも思うのだが、「呪われたカーディガン」という
ことにしている。その方がなんとなくおもしろいから。
なので、これは捨てられない。いつかどこかで、カーディガン供養してあげなければと思う。
◆
柊馬さんに何のお断りもなく始めた句集「ポテサラ」の追っかけ。もちろん柊馬さんから何のお咎めもない。
先日お会いしたときは目を合わせられなかった。ほんとうは気を悪くされているんじゃないかと
内心ヒヤヒヤなのである。なのであるので、夢に柊馬さん現る。柊馬さんはいつものようにニコニコ
とお話をしてくださった。ほっとした。よかった。
夢だから、という大人げないツッコミはしないでいただきたい。こう見えて、わたしは心的虚弱体質なんである。
そして毎年恒例悩みの季節でもある。家の中が寒いのだ。だからなかなか衣替えられないのだ。
ヒートテックの安心感に依存してしまう。朝晩、フリースのやさしさについ甘えてしまう。
昼間、ちゃんちゃんこのない生活なんて考えられない。そしてこの感覚で外出すると、汗を通り越し、
のぼせて今度は冷や汗がでる始末なのである。それなのにヒートテックと別れることができない。
ああ、これじゃあ好きでもない男とずるずる付きあっているダメな女みたいじゃないか。勇気を出して
今日こそ別れを切りだそう。などといいながら、半分は衣替えが面倒くさいだけなんだけどね。
とりあえずヒートテック1枚だけ残してあとは片づける。片づけた。よし。身の周りの引き出しや
クローゼットがすっきりしてうれしいはずなのに、心がすぅすぅするのはWhy?
さむい。
◆
衣替えをきっかけに、断捨離モードに入った。
ここしばらく着ていないものはどんどん捨てている。
やさしさにほだされやすいわりに捨てるのは得意である。
衣替えをしながら、夏物のカーディガンが目にはいる。
「あっ。」と思う。「これはっ。」と思う。
去年買った麻のカーディガン。
去年、外出すると途中からなんかしんどい、ちょっと休憩させて、ということが数回続き、
わたしも体力落ちたなー、歳かなーと思っていた時、ふと気づいたのだ。
しんどくなる時、わたしいつもこのカーディガン着てる、と。
それから怖くて着ていない。
使用されている麻に対するアレルギーのなのかなあとも思うのだが、「呪われたカーディガン」という
ことにしている。その方がなんとなくおもしろいから。
なので、これは捨てられない。いつかどこかで、カーディガン供養してあげなければと思う。
◆
柊馬さんに何のお断りもなく始めた句集「ポテサラ」の追っかけ。もちろん柊馬さんから何のお咎めもない。
先日お会いしたときは目を合わせられなかった。ほんとうは気を悪くされているんじゃないかと
内心ヒヤヒヤなのである。なのであるので、夢に柊馬さん現る。柊馬さんはいつものようにニコニコ
とお話をしてくださった。ほっとした。よかった。
夢だから、という大人げないツッコミはしないでいただきたい。こう見えて、わたしは心的虚弱体質なんである。
[edit]
上野勝比古句集『フロウ』
2015/05/08
Fri. 15:02
勝比古さんは京都番傘に所属されている伝統川柳のお方です。伝統川柳とは無縁のわたしですが、
ふらすこてん句会に通うようになり、そこで勝比古さんとお会いしました。5年前に出された句集ですが、
今年増刷された(すごい!)ものをいただきました。まずは素敵な装丁にしばし見とれ(何色というのでしょうか)
触れ(ちょっとザラザラしている)ながら、昭和の二枚目俳優のような勝比古さんを思い浮かべながら
読みました。
原爆の広場で鳩の豆を買う
ためらいの傷に肌色のサビオ
まな板の音でかぼちゃとすぐ判る
古本屋よく考えて雑に置く
市役所と匂いが違う村役場
片方の傘はすぼめて先斗町
ぴょんぴょんとたすき待つ子が跳ねている
園長のエール赤勝て白も勝て
乙女らは笛吹きながらでも笑う
不揃いを売りにしている無農薬
お口の恋人噛むだけ噛んで捨てられる
狼は悪いと決めている童話
なるほどなあと思う。いわゆる「見つけ」というやつです。なんのひねりもてらいもありません。
わたしが作る川柳はどちらかと言えば、そこにないもの(つまりは嘘)を作り上げるという作業で、
まあ言ってしまえば詩集に「死臭」と刺繍してみようかねという感じ(どんな感じだ)なのです。
ひねり?てらい?思いっきりありますし。
勝比古さんの句のように、普段見ているものだけど見えていないものを見つけるというのは、無意識を意識
するということで、なかなかどうして大変そうである。ふと目にとまるものならすでに誰かが詠んでいるでしょうし。
で、自分はそういうことができないため、こうやって楽してスッキリ感だけ味わってホクホクしているのです。
女房の横で枕を抱いて寝る
飲まいでもええのが青汁飲んでいる
出来る子は放っておいても良くできる
声かけて子に睨まれる参観日
相撲より日本語仕込むのが上手い
挨拶にしては気になる長いハグ
時給より高い綿菓子ねだられる
嘘つかぬだけでこの頃ほめられる
指揮棒で上手に客を眠らせる
嬉しくはないことはない誕生日
駅前で犬の帰りを待っている
大柄の姉に寝押しをしてもらう
こちらは、読んだ後にふっと口元がゆるんでしまう句。日常に潜む皮肉の大名行列や~~。
あかん、もっとまじめに書こ。といってもこういう句に説明はいらないですよね。
ぼやきの中に寂寞たるものが少々混じっている句が個人的好み。
薄皮のまま少年のきゅうり揉み
雨の日の蠅虎(ハエトリグモ)は点である
制服が来て元栓を開けて行く
シャネル一瞬にして耳朶を削ぐ
ふらすこてんに投句されたもの。器用である。「わたしは伝統やから・・・」と言われる勝比古さんですが、
ここでは番傘の句では見えなかった感情が異質にあぶりだされ、読者に想像する愉しみを与えてくれる。
それは少年の冷やかさであり、雨の日の無気力な自分であり、気づかないうちに網羅されつくされた規制や
豊かさへの対価の怖さである。
目を凝らして探した無意識とは違う、言葉のイメージと作者の感覚が裏切り合う中で生まれた新しい世界
だろうと思う。
十四字詩なんていうものもある。
懐紙でぬぐう少年の五指
1・2の3で課長は死んだ
思った程は誰も泣かない
過去完了は少し後引く
おもしろい。余分なことを言わない潔さが勝比古さんに合っているような気がします。
悲観からは何も産まれない/すべては楽観から想像される/だから滑稽に見えても/流れに棹さしてみる/
無駄な抵抗かもしれないが/やってみる価値はある/流す 流れる 流される/どれも結構むつかしい/勝比古
勝比古さん、上手に流されておられると思います・・・・。
また誰か進軍ラッパ吹いている 上野勝比古
ふらすこてん句会に通うようになり、そこで勝比古さんとお会いしました。5年前に出された句集ですが、
今年増刷された(すごい!)ものをいただきました。まずは素敵な装丁にしばし見とれ(何色というのでしょうか)
触れ(ちょっとザラザラしている)ながら、昭和の二枚目俳優のような勝比古さんを思い浮かべながら
読みました。
原爆の広場で鳩の豆を買う
ためらいの傷に肌色のサビオ
まな板の音でかぼちゃとすぐ判る
古本屋よく考えて雑に置く
市役所と匂いが違う村役場
片方の傘はすぼめて先斗町
ぴょんぴょんとたすき待つ子が跳ねている
園長のエール赤勝て白も勝て
乙女らは笛吹きながらでも笑う
不揃いを売りにしている無農薬
お口の恋人噛むだけ噛んで捨てられる
狼は悪いと決めている童話
なるほどなあと思う。いわゆる「見つけ」というやつです。なんのひねりもてらいもありません。
わたしが作る川柳はどちらかと言えば、そこにないもの(つまりは嘘)を作り上げるという作業で、
まあ言ってしまえば詩集に「死臭」と刺繍してみようかねという感じ(どんな感じだ)なのです。
ひねり?てらい?思いっきりありますし。
勝比古さんの句のように、普段見ているものだけど見えていないものを見つけるというのは、無意識を意識
するということで、なかなかどうして大変そうである。ふと目にとまるものならすでに誰かが詠んでいるでしょうし。
で、自分はそういうことができないため、こうやって楽してスッキリ感だけ味わってホクホクしているのです。
女房の横で枕を抱いて寝る
飲まいでもええのが青汁飲んでいる
出来る子は放っておいても良くできる
声かけて子に睨まれる参観日
相撲より日本語仕込むのが上手い
挨拶にしては気になる長いハグ
時給より高い綿菓子ねだられる
嘘つかぬだけでこの頃ほめられる
指揮棒で上手に客を眠らせる
嬉しくはないことはない誕生日
駅前で犬の帰りを待っている
大柄の姉に寝押しをしてもらう
こちらは、読んだ後にふっと口元がゆるんでしまう句。日常に潜む皮肉の大名行列や~~。
あかん、もっとまじめに書こ。といってもこういう句に説明はいらないですよね。
ぼやきの中に寂寞たるものが少々混じっている句が個人的好み。
薄皮のまま少年のきゅうり揉み
雨の日の蠅虎(ハエトリグモ)は点である
制服が来て元栓を開けて行く
シャネル一瞬にして耳朶を削ぐ
ふらすこてんに投句されたもの。器用である。「わたしは伝統やから・・・」と言われる勝比古さんですが、
ここでは番傘の句では見えなかった感情が異質にあぶりだされ、読者に想像する愉しみを与えてくれる。
それは少年の冷やかさであり、雨の日の無気力な自分であり、気づかないうちに網羅されつくされた規制や
豊かさへの対価の怖さである。
目を凝らして探した無意識とは違う、言葉のイメージと作者の感覚が裏切り合う中で生まれた新しい世界
だろうと思う。
十四字詩なんていうものもある。
懐紙でぬぐう少年の五指
1・2の3で課長は死んだ
思った程は誰も泣かない
過去完了は少し後引く
おもしろい。余分なことを言わない潔さが勝比古さんに合っているような気がします。
悲観からは何も産まれない/すべては楽観から想像される/だから滑稽に見えても/流れに棹さしてみる/
無駄な抵抗かもしれないが/やってみる価値はある/流す 流れる 流される/どれも結構むつかしい/勝比古
勝比古さん、上手に流されておられると思います・・・・。
また誰か進軍ラッパ吹いている 上野勝比古
[edit]
ふらすこてん5月句会
2015/05/04
Mon. 11:43
先月欠席したら、ちょっとシステムが変わっていまして、三人選で自分が一番いいと思った句に対し、
全員が一言ずつ発言していくという、つまり高得点句ばかりを褒めそやす(言い方よ)のではなく、
恵まれない子(少得点句)に愛の手を!というのが狙いのようです。
いいと思います。
ただ、実質的な議論の時間が短いと思うのはわたしだけでしょうか・・・
わたしが選んだ句。
弁当にボルト3本釘2本 くんじろう
(狂気なのかギャグなのか。狂気の沙汰も鉄次第なのか?)
鉄パイプ穴の向こうは花盛り すずな
(裏とその裏、悪と偽善、暴力と消極的平和、世の真髄を見たり。)
負けませんあんた鉄でも毛蟹でも 柊馬
(鉄には負けそうやけど、毛蟹には勝てるやろ。一瞬騙されそうになった。)
盲腸に溜まる砂鉄と糸くずと やよい
(奥さん、何をどうしたらそんなことになるのかい?)
花冷えや鉄のぱんつは喰い込んで ゆみ葉
(花冷えやが憎い。鉄のぱんつが憎い。喰い込んでが憎い。よって作者が憎い。)
今回はハムの人的に言えば、俳句の人、野口裕さんが選者さんでした。
選句の理由に「鉄の印象をうまく利用している句を選んだ」と言われて、へぇと思いました。
わたしはどちらかと言えば、鉄のイメージを感じさせないというか、想定外な鉄の句を選句の条件に
していたのでね。これは俳句と川柳の見方の違いなのかなあとおもしろく思いました。野口さんの発言は
いつも的確で、やや辛口でとても清々しく、これも俳句の人ならではなのかしらん。
わたしの句。
人参がないので君を救えない
さっそうと臓器忘れる映画館
絹さやとピンク映画は無口なり
ぶってぶってちょうどいい角度になる
やさしさがややこしいので打撲です
病室が白いのマリネにされちゃうの
パイプ椅子チヨコレイトなことをして
みどりごの翅はつめたきステンレス
2次会以降はさらに楽しく。
帰りの電車ではドS軍団にからまれ、やれ足首前方が老けてるだの、なんでそのブラウス買ったんだの、
ポテトサラダを冒涜するなだの(←そこまでは言ってない?)、まあ言われ放題ですわ。まあかわいそうな子羊
ちゃんですわ。ほっとけコノヤローですわ。
ということで、6月句会も楽しみです。
全員が一言ずつ発言していくという、つまり高得点句ばかりを褒めそやす(言い方よ)のではなく、
恵まれない子(少得点句)に愛の手を!というのが狙いのようです。
いいと思います。
ただ、実質的な議論の時間が短いと思うのはわたしだけでしょうか・・・
わたしが選んだ句。
弁当にボルト3本釘2本 くんじろう
(狂気なのかギャグなのか。狂気の沙汰も鉄次第なのか?)
鉄パイプ穴の向こうは花盛り すずな
(裏とその裏、悪と偽善、暴力と消極的平和、世の真髄を見たり。)
負けませんあんた鉄でも毛蟹でも 柊馬
(鉄には負けそうやけど、毛蟹には勝てるやろ。一瞬騙されそうになった。)
盲腸に溜まる砂鉄と糸くずと やよい
(奥さん、何をどうしたらそんなことになるのかい?)
花冷えや鉄のぱんつは喰い込んで ゆみ葉
(花冷えやが憎い。鉄のぱんつが憎い。喰い込んでが憎い。よって作者が憎い。)
今回はハムの人的に言えば、俳句の人、野口裕さんが選者さんでした。
選句の理由に「鉄の印象をうまく利用している句を選んだ」と言われて、へぇと思いました。
わたしはどちらかと言えば、鉄のイメージを感じさせないというか、想定外な鉄の句を選句の条件に
していたのでね。これは俳句と川柳の見方の違いなのかなあとおもしろく思いました。野口さんの発言は
いつも的確で、やや辛口でとても清々しく、これも俳句の人ならではなのかしらん。
わたしの句。
人参がないので君を救えない
さっそうと臓器忘れる映画館
絹さやとピンク映画は無口なり
ぶってぶってちょうどいい角度になる
やさしさがややこしいので打撲です
病室が白いのマリネにされちゃうの
パイプ椅子チヨコレイトなことをして
みどりごの翅はつめたきステンレス
2次会以降はさらに楽しく。
帰りの電車ではドS軍団にからまれ、やれ足首前方が老けてるだの、なんでそのブラウス買ったんだの、
ポテトサラダを冒涜するなだの(←そこまでは言ってない?)、まあ言われ放題ですわ。まあかわいそうな子羊
ちゃんですわ。ほっとけコノヤローですわ。
ということで、6月句会も楽しみです。
[edit]
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