川柳サイド Spiral Wave 

2017/01/27
Fri. 13:14

という、川柳冊子ができました。


各人最初の3句を紹介したいと思います。




   感想です今は光しか見えない

   猫を抱き上げ「この世はあの世のつづきです」

   おふとんのなかまで句点打ちにくる     (「そういえば愛している」  柳本々々)


そういえば々々さんの句は感想文みたいだ。
あの世でもこの世でもないところを漂っているみたいな感想文だ。
この世があの世のつづきとして、この世のつづきはやっぱりあの世なのか、
百万回生きた猫なら知っているかもしれない。
々々さんの感想文は終わらない。
終わらないから、おふとんのなかまで句点を打ちにくる。たとえ句読点を
打たれても、この世からまた別の世へ行って感想文はつづくだけなんだけど。




   萌えキャラのひき返しては熊射殺

   熊を撃つ地球が沈む絵のように

   弾丸の摘出法を説くアニメ     (「インブリード」  川合大祐)


「私たちは最初からあなたたちが大嫌いで、最初からあなたたちが大好きだった」
幾原邦彦『ユリ熊嵐』
と詞書がある。
うーん、知らない。知らないから、ああ、そうなんだ、と思うしかない。
問題出されて考える前に答えを差し出された気分。
なのでさらなる答え合わせをするために、YouTubeで見ました。
か、かわいい。かわいい女の子がたくさん出てきた。
第1話と最終話だけという、怠慢な観かたですみませんが、観てから読む。
それはそれで映像以上のことを句から想像するのはなかなか大変で、だから、
なるほど、そういうことね、がうがう。と思ったりするだけなのだが(すっかり
感化されてはいるが)。同じものを観て、作句し合うと違いと共感を楽しめる
かもしれない。なんでユリ部分には触れない?と思ったり。(そこは興味の
対象ではないの?がうがう)
残りの句もこんな感じで読んだり観たりしたものから3句ずつ作句している。
そういう作句の仕方はこれまでもあるけれど、この作品からと堂々と発表するのは
川柳ではめずらしい試みだと思うし、先にネタをばらしているという点で
とても勇気のいることだと思う。川合さんはきっととても正直な人なんだろうなあ。



   齧られてうんとはじかみらしくなる

   たんぽぽもたんぽんもあり水の音

   よく妊む電子レンジで好きだった    (「ユイイツムニ」  榊陽子)



あー、ほっとするわー。(自分の句やし、そらね)
こうやって若い人の句と並ぶと、自分の句の老いを痛感する。
最初の3句ぐらいまではもちろんつかみを意識してこれにしたはずなのに
刷り上がってみると、ほんまにこれでつかみはOKだったのか悩ましいところ。




   仏蘭西の熟成しきった地図である

   Re:がつづく奥に埋もれている遺体

   毎度おなじみ主体交換でございます    (「徘徊ソクラテス」  飯島章友)



飯島さんの句には、ひんやりとした懐かしさを感じる。
仏蘭西の熟成しきった地図はどうにもゆるぎなくてうっとうしくて目障りだ。
回顧主義もいいけれど、その目はとてもひややかである。
文字に埋もれた遺体はどこかで会ったことのあるような・・・どこかわたしに
似ているような気がする。あの遺体がわたしなら、今ここでメールを打っている
わたしは誰なのか。どんどん更新されていくわたし。ちりかみ交換のように
古新聞古雑誌と同じように古わたしも捨てられるのだ。




   夕立のように天使が降ってくる

   透明のタンクにみたされる生水

   鉄塔が午前三時を指している    (「天使降る」  兵頭全郎)



天使が降る。夕立のようにだから、はげしく降ってくる。よくもまあそんなことを
思いつくなあと思う。降ってきた天使は誰かに拾われるのか、天使溜まりができて
そのうち消えてしまうのか、そんなありえないことを想像させられる。
天使が降ったあとに読んでいるせいか、透明のタンクに満たされている
天使を想像してしまう。残酷かつエロティック。
勝手なイメージではあるが、鉄塔は男性的である。午前三時を指して天使に
何をしようというのだ!いかにも川柳人が好きそうな句である。
午前三時はいかようにも取れるし、そもそも指さないし。




   水鳥の潜ったあとの叫び声

   イヤホンをふたりで聴いて背信する

   タイピンはどこ声優の変声期   (「人体は樹に、樹は人体に」   小池正博)


3句に共通するのは声。
聞いてしまった叫び声は耳鳴りのように残響する。それは水鳥の姿が
見えないぶん余計に不気味でおそろしい。
ふたりは何を聴いているのだろうか、誰かを裏切っているのだから、本来は人に
聴かれてはこまるものであるのだろうし、ふたりでという行為に背徳感が増幅され
ゾクゾクする。
タイピンをどこかに置き忘れた。タイピンぐらい、とも思うが本人にしてみればそうも
いかないのかもしれない。変声期には声だけでなく体の内側がまったく別なものに
変化していることへの焦りのような動揺のようなものを感じる。
声というのは輪郭のない現実で、幻想に満ちている。もしかすると今聞こえている声も
自分にしか聞こえていないということだってありうるのだ。


その他に現代川柳百人一句(小池正博選出)が付いています。
   
   壁がさみしいから逆立ちをする男   岸本水府

   ベッドの絶叫夜のブランコに乗る   林ふじを

   月光や「救われたいと思います」   松本芳味


お!読んでみたいなと思われた方、本体500円+送料180円で小池さんから
ご購入いただけます。あと葉ね文庫さんにも置かせていただいています。
よろしくお願いいたします。




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