守田啓子句集『失った深さを埋めるように 雪』 

2018/04/05
Thu. 18:18

  そんな日もあったねちぢみほうれん草
  逆境に満月なんか出てこないで
  なにもかも皆既月食だよ さむい
  はい、そうです。スリッパに星見せました。
  海へ行く聞き分けのないホースです

これらの話し言葉の句のおもしろいのは、誰かに
話しかけている感じはなくて、ひとりごとのような
つぶやきのようなものなんだけど、句にした時点
でそれは聞いて聞いてに変わってしまうところで、
いい感じにもったいぶったヤな感じになるんだけ
ど、聞きたい聞きたいってなるところ。


  さらされるあたしのもふもふした部分
  お尻から糸を出すひとりの時間
  全方位肯定ムーミンの顔で
  必然を行く美しい蝶結び
  寒天を出ていいものか迷ってる


見られたくないのは「もふもふ」「お尻から糸」。
見られてもいいように取り繕った「ムーミンの顔」
と「蝶結び」。もっともっと自分らしく生きたいの
にという思いがばんばん伝わってくる。でもなあ、
寒天に固められるってなんかいい。カクカクしてる
けど、それなりに弾力はあるし、飛び出そうと思え
ば出られそうだし、結構快適なんじゃないかなと
思えてくる。


  私より淋しい音を出しなさい


淋しい音か。むつかしい。自分の淋しさの深さな
んてだれにもわかって貰えないから自分の淋しさ
が一番なのだ。啓子さんはおかじょうきの3月号で
<たまらなくさびしい方は3番へ>という句を作って
いる。わたしみたいな寂しがりは「私より」や「た
まらなく」に呼ばれてつい返事をしてしまう。


  洗濯物の揺れ方 人の壊れ方
  ずぼらではありますがおっぱいがある
  死んではいないか万能ネギ散らす
  桜はまだでニコニコ動画みて眠る


こんなふうにさらっとおもしろいことを言いたい。
感傷におぼれないで颯爽と茶化したい。本人は
そんなおもしろいことを言ったつもりがないのが
なおいい。


  バラバラにならないように足を組む  啓子


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