はいく 

2018/10/18
Thu. 10:26

久しぶりに一冊最後まで一気に読めた句集に出会っ
た。岡田一実さんの『記憶における沼とその他の在
所』である。
残念ながら川柳ではなく俳句なんだけど。



   蟻の上をのぼりて蟻や百合の中   一実


もちろん「蟻の上をのぼって蟻は百合の中」とすれ
ば川柳になるけど、それでは伝わり切らない蟻への
情とか作者の小さな感動が、文語体の重みと切れの
清々しさによってしっかり感じることができる。
(のがくやしい。)



   煮凝を纏ふ目玉を転がせば
   焼鳥の空飛ぶ部位を頂けり


目玉の句、最初読んだ時わからなかったけど、
なんのことはない煮魚のことですよね。(違ってた
ら恥ずかしい)そのなんのことはないことをこんな
いやらしく詠めますかって話ですよ。次のだって手
羽先でしょ。それをこんなもったいぶった洒落た言
い方できますかってそもそも誰もしませんからって
話ですよ。言葉の持つ概念を無理に崩そうとか加え
ようとしないで作り上げた奥行きのある世界。



   見るつまり目玉はたらく蝶の昼
   椿落つ傷みつつ且つ喰われつつ


なんやろう。しつこい。めっちゃ説明してくる。や
のにいやじゃない。引き込まれる。わたしみたいな
頭の悪い子にも分かるように話をしてくれる養老
孟司さんみたいな感じ。



   飛ぶ鴨に首あり空を平らかに
 

この句は鴨に首があることが発見の喜びなのでは
なくて、飛ぶ鴨を点でもなく線でもなく面と捉えた
ことである。全方位に広がる空を平らにならすよう
に飛んでいく鴨と空のうつくしさ。


その他にも、

   秋晴や毒ゆたかなる処方箋
   鷹は首をねぢりきつたるとき鳩に
   瓜ふたつ違ふかたちの並びけり
   冬木の芽ときには肺の楽器となる
   喉に沿ひ食道に沿ひ水澄めり
   しらほねに耳の骨なし女郎花
   風船のしぼみて舌のやうなもの

グロテスクなんだけどやさしい、サディスティック
なんだけど痛くない、そんな句にとても惹かれた。
ちゃんと見えてるし頭ではわかっていることがつま
り記憶における沼だとしたら、それを引きずって歩
くのは終わりにしたいと思った。


 かたつむり焼けば水焼く音すなり  岡田一実





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コメント

こんばんは、
おもしろし。
すんごく興奮してはりますね。けどわかります。
提示された句はほぼ身体感覚に訴え掛ける構造なんかな、
触覚に触れるというか、ヤコペッティ的というか。
一実さんという名前から性別はわからないけれど
なんとなく男性かなという印象。

Q #- | URL | 2018/10/18 22:19 * edit *

Qさま


わたしがいいなと思う句の傾向もおおいにあるや
ろね。そんな句ばっかりでもないんよ。
あとね、俳句してなくても季語の勉強してなくても
知ってる人は知ってるんやろうけど、「鷹化して
鳩と為る」っていう春の季語があっての、(鷹は
首をねじりきつたるとき鳩に)なんだって。そんな
ことも知らんでって恥ずかしさもあるけど、知らん
から、わあって思えることを喜びたい。(←強がり
残念でした。女性です。

ようこ #- | URL | 2018/10/20 11:20 * edit *

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